ハーフステアマウスの紹介
この記事はMice Advent Calenderの9日目となります。
◆はじめに
1年振りの更新となってしまいました。
今年は計画的にマウスを製作していたにも関わらず、
大会で全く完走できなかったため、なかなかブログを書く機会が得られず、
ついには全日本大会でも完走できなかったため、黒歴史として封印しようかと思いましたが、
Mice Advent Calenderなる企画に手が滑って登録してしまったので、
泣く泣く記事をしたためております。
遅ればせながら、全日本大会お疲れ様でした。
今年も書いていた気もしますが、来年こそは32×32の迷路で戦いたいと思います。
もちろんハーフステアマウスというロマンを掲げた上での目標です。
今回の記事では、今年一年の振り返りという名の
ステアリングの
◆機体紹介

マシンデータ | |
Name | Sylphy2 |
Width | 38 mm |
Length | 68 mm |
Height | 13 mm |
Weight | 20 g |
Wheel | d : 13 mm w : 3.5 mm dNaNo Tire |
Processor | RX631 (96MHz) |
Motor | MK06-4.5 |
Encoder | AS5147P (Magnetic Encoder) |
Potentiometer | SVM4A103A0L17R00 |
GearRatio | 9 : 37(駆動) / 1 : 8(操舵) |
Battery | Lipo 70mAh 1cell |
Motor Driver | DRV8836 |
Sensor | OP265FAD + LTR-4206 |
Gyro | MPU-6500 |
走れば世界初だったステアリング機構搭載のハーフマウスです。
詳しくは後述しますが、四輪接地できずに停まれなかったり、
センサ配置が残念なことによる探索の不安定さなど、
数々の設計ミスによりマウスに成れなかったマウスモドキです。
ツライことはつくる前からわかっていたことだろうと思われるかもしれませんが、
それ以上にツラかったのです。
それでもなお挑戦しようと思った理由を語っていきたいと思います。
◆メリット
ロマンです。
これ以上はありませんが、これだけではわからない人のために3つに絞って書きたいと思います。
①カッコイイ
まずは見た目の話です。一般的な変則四輪マウスと比べてホイールベースを長くできるので、
クルマのような佇まいと速そうな雰囲気を漂わせたビジュアルになっていると思いませんか。
他にはないマウスなのは一目瞭然なので、個性的なマウスをつくりたい人はオススメです。
ハーフサイズだと小さすぎて目立たないですけどね・・・
②カワイイ
また見た目かよと言われてしまいそうですが、こちらは動きの話です。
ハーフサイズくらい小さいとタイヤをシャカシャカ動かしたり、
袋小路に侵入したときにノロノロバックする姿が愛らしく感じます。
普通のマウスにはない癒やしが欲しい人はぜひつくってみて下さい。
(癒やしよりも苦しみのほうが多いのはつくってみた人だけがわかるのです)
せっかく撮ったから寝潰れる前に投げておこう、コヒロ先輩駐車場地獄にハマるの巻 pic.twitter.com/1d1niwfTif
— ま. (@mmkn730) 2017年7月9日
③速い(理論上)
見た目の話でもしましたが、ステアリングマウスは変則四輪マウスと比べて
ホイールベース(前後のタイヤ間の距離)を長くできるため、加減速時の荷重移動で
基板に荷重がかかりにくく安定して四輪接地できることや、詳しい理論は省きますが、
直進時のふらつきが抑えられるので直線での安定性が抜群です。
その代わりに、ホイールベースを長くするとターン時にタイヤを滑らせながら
曲がらなければならないので、操舵する(タイヤを曲げる)ことによってターンでも
しっかりグリップできるようなります。 これがステアリングの基本的な考え方です。
現に今年優勝したライントレーサーやレースカーでも前輪を操舵しているものが一般的で、
理論上はステアリングするほうが速いはずなのです。
ただし、マイクロマウスでは理論上ではと念押ししておきます。
詳しくは次のデメリット紹介で解説します。
◆デメリット
こちらはメリットとは打って変わって、書き始めると天より高く峙つ分量となりそうなので、
心が折れない程度に記していきたいと思います。
①構造が複雑
マイクロマウスでは、モータとファンを追加しただけの吸引機構でさえ複雑な機構と
言われるくらい部品が小さく、精密な機体となっており、その中でもハーフサイズは、
上級者でもハードが難しいと言われているにも関わらず、
ステアリング機構なんてものを搭載するのは狂気の沙汰としか言いようがありません。
クルマの機構を踏襲したSylphy2では、通常では手に入らないほど小さな特注ラックギアや、
タイロッド、ポテンショメータなど、普通のマウスとは全く異なる設計するはめになりました。
おかげで最高に楽しい設計ができました。楽しすぎてデメリットにならないかもしれません。
(※個人差があります)

②応答が遅い
マイクロマウスでは、急カーブを連続で正確に曲がる旋回性能と
それに追従するための応答性が必要です。
固定輪では、左右輪の回転数の差がすぐに角速度へとして現れ、
コンマ何ミリ秒程度しか遅れが発生しません。
それに対して、操舵輪では、タイヤを操舵することによってタイヤが横に撓むように変形し、
変形したタイヤが戻ろうとする力によって車体を曲げています。
つまりタイヤを操舵してから実際に車体が曲がるまで、数ミリ秒の遅れが発生します。
探索程度のスラロームでも普通に操舵しただけでは曲がるのが遅すぎて、
頭をゴツゴツぶつけながら探索するほどでした。もちろん応答性を上げる方法もあるので、
マイクロマウスでステアリングは不可能ではありませんが、
困難な道程になるのは避けては通れないでしょう。
③制御が難解
おそらく制御の部分が最も難しいと思われます。
そもそもステアリングをどうやって制御しているか想像できない人がほとんどじゃないでしょうか。
タイヤの角度によってどれだけ曲がるのか、壁やジャイロのフィードバックをどうすれば良いのか、
さっぱりわからないのではないでしょうか。
また、超信地旋回ができないSylphy2は袋小路に入った際の
バックアルゴリズムや制御を追加したり、上記の応答性を上げる制御や、
前壁による角度制御できなかったり、といった多くの制御や制約を発生します。
無理やりフィードバック制御をすればそれらしく走るのかもしれませんが、
少なくとも自動車工学の基礎知識くらいはないと骨が折れると思います。
◆設計ミス
ここまでの内容を読んでつくりたくなった人はいないと思いますが、
自分のように相当なロマンチスト(マゾ)か、私の熱心なファンや狂信者がいるかもしれませんので、
参考になるかはわかりませんが、私が犯した設計ミスを赤裸々に公開したいと思います。
①四輪接地しない
Sylphy2は前輪が操舵輪、後輪が駆動輪となっており、
クルマで言うところのRRかMRになっています。
そのため、後輪の荷重抜けには強いはずだったのですが、3Dプリントをつかった部品の精度や
想定外の軽さによって、加減速時の荷重移動で前輪や後輪に荷重がかからなくなり、
制御不能に陥ってしまいました。クルマほどの重量があってもサスペンションが必要なのに、
たかだか数十グラムの車体でダンピングできないのは致命的でした。
②壁が見えない
Sylphy2は一般的なクルマと同様に、前輪が操舵輪、後輪が駆動輪となっており、
旋回中心は後輪軸の中心にあるはずです。(厳密には少し前方になります)
しかし、センサの配置をホイールベースの中心を旋回中心として設計してしまったため、
区画の切れ目にマウスの後輪軸を置いた際に3/4区画先を見てしまい、壁切れがし辛かったり、
角度が数度ずれただけで前壁が読めなくなったり、横壁を見逃したりと散々な目に遭いました。
おそらく変則四輪の設計を流用したためだと思いますので、設計する際にはお気をつけて。
◆まとめ
ここまで読んでもなおつくってみたいという変態のために再度警告します!
そもそもマイクロマウスとは完走するだけでも難しい競技と言われており、
その中でも上級者向けのハーフサイズでステアリングしようと考えるのは、
ダークソウルでSL1の奴隷兵装備の縛りプレイをやるようなものなので、
それ相応の覚悟と心の強さが必要とされます。
それでもつくりたいという人は私が全力で参考にするのでブログやTwitterに投稿して下さい。
現在私の心が折れそうです。
来年の新作は、モータを7個載せたモータが走るマイクロマウスを製作する予定でしたが、
某クラシックのステアリングマウスの人がモータを9個載せた機体の設計図を上げていたので、
速度に振るべきか、ロマンに奔るべきか悩み中です。
来年こそはステアリングハーフマウスで完走してみせるので応援よろしくお願いします!
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